映論言いたい放題 Film 214 峠 最後のサムライ

映論言いたい放題

『峠 最後のサムライ』
2022年6月17公開
■監督・脚本:小泉堯史 ■原作:司馬遼太郎
■出演:役所広司(河井継之助)/松たか子(継之助の妻・おすが)/香川京子(継之助の母・お貞)/田中泯(継之助の父・代右衛門)/永山絢斗(継之助の従僕・松蔵)/仲代達矢(前長岡藩主・牧野雪堂)
■あらすじ:累計発行部数398万部超の大ベストセラー小説『峠』初の映画化。主人公は幕末に活躍した越後長岡藩の家老・河井継之助。旧幕府軍と新政府軍に日本が二分するなか、継之助は「和平中立」を訴え、戦禍を避けようと努力を続けた。しかし思い空しく長岡藩も戦争の渦に巻き込まれていく。
© 2020『峠 最後のサムライ』製作委員会
合評参加者:
 東啓五(T・ジョイ長岡 支配人)
 小此鬼(おこのぎ)莉子(T・ジョイ長岡 アシスタントマネージャー)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

akko:コロナ禍の影響で3度も公開延期になりましたが、今回ようやく待ちに待った公開となりましたね。

:そうですね。これは劇場としても10年に1度の映画だと思いますので、なんとか盛り上げて行かなければと思って取り組んだのですが、こちらの予想をはるかに上回るご来場をいただいています。

和田:司馬遼太郎の原作で、河井継之助が主役、演じるのは役所広司さん、そして監督が黒澤明の元で助監督を務めていた「雨あがる」の小泉堯史さんですからね。

akko:観客はやはり司馬遼太郎ファンのシニア世代が多いのでしょうか。

:そうですね。なかには80代以上、もしかしたら90代の方もいらっしゃる感じで。

akko:映画の特集番組で鑑賞者のコメントを紹介していたのですが、20代と思しき金髪女子が「泣きました〜」と言っていたのを見て驚きました。若い人の心にも届く作品なんだなと。

:長岡市内の小中学生を対象に配布した鑑賞補助券を使うと500円で鑑賞できるサービスが行われていて、上映1週目はロビーに子どもたちがたくさん来ていたんです。ちょうど人気アニメをやっていたので、そちらかなと思ったら「峠」の方で。

和田:それは嬉しいですね!

akko:学校でも郷土の偉人ということで、学ぶ人物のひとりですよね。小此鬼さんは長岡出身ですか。

小此鬼:はい。子どもの頃に授業の一環で河井継之助記念館に行ったことがあります。でも正直それほど詳しい知識はありませんでした。この映画がきっかけで継之助のことを改めて勉強した感じです。

akko:賛否両論分かれる人物ですが、いかがでしたか。

小此鬼:強いですよね。芯がある人だと思いました。

:ですよね。印象的だったのは小千谷談判のシーン。家老という役職でありながら、恥も外聞も捨てて何度も粘り強く交渉しますよね。戦争をしたくなかったという思いと共に、継之助の人間性が伝わってくる場面だと感じました。

和田:実際に継之助が残した言葉をセリフにして、随所に散りばめているのも見どころのひとつですね。

akko:印象的だったのは東出昌大さんが慶喜を演じていた大政奉還のシーンです。東出さんが以前父親から読むように薦められた本が『峠』で、それをきっかけに歴史好きになったそうです。何か運命めいた配役だなあと思いながら観ていました。

和田:小説では継之助の半生を描いているのですが、映画では尺の制限もあるため最後の1年のみを取り上げています。その短い中でいかに継之助の人間性を表現するか、監督も苦労されたのではないでしょうか。

小此鬼:T・ジョイ長岡のTwitterで情報発信をするためにゆかりの地を巡ったんです(「#継之助小噺」で検索)。朝日山古戦場に行ったときにはもう大変でした。

:僕も行ったのですが、まさか山道を1時間も登ることになるとは思わず、スーツのままで登る羽目になりました(笑)

和田:あの場所は機材車が途中までしか入れなくて、途中から人海戦術で山頂まで機材を上げたそうですよ。小泉監督は今でもフィルムで撮影されていて、しかも同時に複数台のカメラを回すため、大きな映写機を何台も運ばなければいけない。運搬は本当に大変だったと思います。

:自分はこの映画2回見ましたが、1回目と2回目では話の入り方が違うんですよね。3回目もまた見たいと思っています。

akko:県内で多数ロケが行われていて、新潟の風景がたっぷり出てくるのもうれしいですよね。撮影場所、物語、セリフ、歴史的背景など注目点を変えながら繰り返し鑑賞しても面白そうですね。

和田:フィルム撮影ならではの美しい映像が堪能できます。ぜひ劇場の大スクリーンで観てほしい作品です。

T・ジョイ長岡 2022年7月オススメ映画

『エルヴィス』
2022年7月1日公開

人気絶頂で謎の死を遂げた伝説のロックスター、エルヴィス・プレスリー。彼の成功の影には強欲と呼ばれたあやしいマネージャーの存在があった。果たして彼の死の真相はいかに…。エルヴィスを演じるオースティン・バトラー自身がほぼ全編で歌声を披露した話題作。


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