映論言いたい放題 Film 209 2021年ベスト映画
2020年、コロナ禍による映画館休館という未曾有の事態を乗り越えて迎えた2021年。まだ収束は見えませんが、映画業界は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が100億円突破のスマッシュヒットを飛ばしたり「007」最新作など公開延期になっていた作品がようやく封切られたりと、少しずつ明るい兆しも見えた1年だったように感じました。
2022年はどんな1年になるのでしょうか。いずれにせよ映画という「文化」を楽しむことができる1年でありますように!
参加者:
東啓五(T・ジョイ長岡 支配人)
池田直樹(T・ジョイ長岡 映写担当)
田中大輝(T・ジョイ長岡 アシスタント・マネージャー)
akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)
※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送
東啓五 ベスト3(T・ジョイ長岡 支配人)
1位は『劇場版 呪術廻戦 0』です。物語としては前日譚という内容でした。アニメ版よりもさらにバトルシーンも豊富で、クオリティが高く引き込まれましたね。主人公の乙骨憂太の声を担当したのが『エヴァンゲリオン』の緒方恵美さんだったところもポイントが高かったです。たまに「碇シンジっぽいかな?」と最初は思うところもありましたが、見事にマッチしていました。映画ならではの面白さも用意されていてワクワクさせられた1本でした。
『そして、バトンは渡された』が2位です。ミステリー要素もあるような宣伝をしていたので、興味を持って公開を楽しみにしていました。実際に観賞してみると、期待を裏切らず「これからどうなる?」と気になる展開が続きました。オチもある程度予想はついたのですが、それでガックリすることもなくしっかり感動しました。ハンカチ必須の号泣映画でしたね。
もう1本は『あなたの番です 劇場版』です。ドラマ版は交換殺人事件でしたが、こちらはふたつの殺人事件が入り交じる展開です。いろいろ伏線があるのですが、最後には回収されていきスカッとした終わり方でした。これから観賞する人は、ドラマ版の全話は見なくても、少しだけ見て予習したほうがより楽しめるかもしれないですね。
池田直樹 ベスト3(T・ジョイ長岡 映写担当)
僕の1位は『DUNE/デューン 砂の惑星』です。主演のティモシー・シャラメは、レオナルド・ディカプリオを初めて見たときと同じような衝撃で、久々に「来たな!」という美青年ですよね。SFに興味のない女性でもティモシーくんが出ているだけで観賞価値があると思います。そして建物、音楽、世界観、すべてがすごかった。真面目なSFで一切冗談も出てこない。見ている間に完璧にその世界に没入することができました。
『サマーフィルムにのって』も良かったですね。時代劇オタクの女子高生が自主制作映画を作るという話なのですが、そこにタイムリープも絡んできて見応えがありました。ギャグも面白かったし、何より主人公が本当に時代劇が好きということが伝わってくるんですよ。そこが良かったですね。
ドキュメンタリー映画ですが『14歳の栞』も記憶に残りました。ある中学校の2年6組35人の生徒全員に密着するという手法で、こういうタイプの作品は見たことがなく印象深かったです。
ほかにも『最後の決闘裁判』の重厚さ、監督交代でここまで作品のクオリティが上がるのかと驚いた『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』など、印象深い作品が多かったです。
田中大輝 ベスト3(T・ジョイ長岡 アシスタント・マネージャー)
イチオシはやはり『シン・エヴァンゲリオン劇場版』です。過去作品をずっと見ているのでつい推してしまいますね。
洋画では『フリー・ガイ』が面白かったですね。ほかの映画やゲームの小ネタを挟んでくるので、映画好き、ゲーム好きだとより楽しめる作品です。もともとモブキャラ(アニメや漫画のその他大勢の群衆)だった主人公が、世界の危機を救うために戦うという話です。ゲームってプレイする側が主役ですけれど、結局は脇役あっての主人公で、彼らがいないと世界は成立しないわけですよ。主人公がひとりだけでは何もできないことに気付かされました。これって結構、突き詰めて考えると深いテーマですよね。
3位は邦画から『るろうに剣心 最終章 The Beginning』です。4月23日に『最終章 The Final』が公開されて、その1ヶ月半後の6月に公開された作品ですが、圧倒的に『The Beginning』のほうが良かったですね。映画としては5作目にして最終作ですが、これが本当の「始まり」ですよね。剣心の過去が明かされたことで、逆に前の作品が気になって全部見直してしまいました。人気漫画を実写化するのはハードルが高い部分もあると思うんですが『るろ剣』は見事に成功していると思います。
akko ベスト3(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」出演)
1位は『ドライブ・マイ・カー』です。まるで上質な小説を紐解くような感覚の作品でした。フィクションと知りつつも、映画に出てくる登場人物の人生を本当に垣間見ているような気持ちになります。岡田将生さん演じる「問題を抱えた俳優」が、おそらく人生最後になるであろう演技を見せるシーンでは鳥肌が立ちました。主人公2人のロードムービーシーンでは新潟の風景も出てくるので必見ですよ。
2位は『リスペクト』です。アレサ・フランクリンは昔からファンでしたが、あまりにも歌手として凄すぎて、正直彼女のプライベートのことを考えたことは一度もありませんでした。南部の陽気なビッグママのイメージの裏にあんな壮絶な事情があったことに驚愕。期せずしてアメリカの歴史と共に生きることになったアレサの人生に感動しました。
シャマランの最新作『オールド』は、やはり期待を裏切らないトンデモ設定でした。ミステリー仕立ての作品でしたが、登場人物の姿を通して「人生とは一体何か」という哲学的な問題にまで思いを馳せることができました。次点で最後まで迷ったのが『マトリックス レザレクションズ』です。第1作が伝えてきたメッセージや世界観に共感出来た人は「おかえり、ネオ」と言いたくなるような作品でしたね。
和田竜哉 ベスト3(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター)
2021年のベスト映画はソウルの歌姫、アレサ・フランクリンの前半生を描いた『リスペクト』です。自分が音楽好きのため、どうしてもミュージシャンの伝記映画は採点が甘くなってしまうきらいがあるものの、純粋に映画としてみても山あり谷ありを経て迎えるクライマックスのゴスペルライブシーンは感涙もの。ジェニファー・ハドソンの鬼気迫る熱演もあり、実際のライブを体験しているような昂りを覚えました。その時のライブを収録したアルバム『Amazing Grace: The Complete Recordings』は超名盤ですので、映画に感動した方はぜひ。
邦画で圧倒的によかった『花束みたいな恋をした』を2位に選びました。数々の名作ドラマを世に送り出している脚本家・坂元裕二さんが、満を持して書いた映画オリジナルストーリーで、サブカル好きの若い男女の5年間の恋を描いています。実生活では絶対に使わないような練られた台詞を繰り出すのですが、それが嫌みにならないところがさすが。50代半ばにして、サブカル好きの若者の生態をあれだけリアルに描ける人はそういないのでは。今後も期待しています。
3位はアメリカの車上生活者を描いた『ノマドランド』です。リーマンショックの影響で仕事と住居を失った中年女性が、中古のキャンピングカーでノマド(遊牧民)生活を始め、行く先々で他のノマドワーカーたちと交流を重ねるという映画。主演のフランシス・マクドーマンド以外はほぼ全て本物のノマドの人たちが演じており、まるで良質のドキュメンタリーのよう。決して楽な生活ではないと思うのですが、自らの意思でそれを選んでいるのだという矜持が感じられ、カウボーイのDNAがそうさせるのか、などと考えてしまいました。
T・ジョイ長岡 2022年2月オススメ映画
『大怪獣のあとしまつ』
2022年2月4日公開
日本中を恐怖に陥れた巨大怪獣が死亡する。安堵と喜びに沸く国民だったが、死体はふくれあがり爆発の危機の見舞われる。国家的危機を任されたのは首相直轄組織・特務隊の青年だった。奇才・三木聡監督が描く「怪獣映画」のその後の世界。
© 2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会
『ドリームプラン』
2022年2月23公開
世界屈指のテニスプレーヤー、セリーナ&ヴィーナス・ウィリアムズ姉妹。彼女たちを育てたのはテニス未経験の父親だった。子どもが生まれる前から「世界王者に関する計画書」を作っていたという彼。果たしてそれはどのようなプランだったのか。
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.