映論言いたい放題 Film 202 ノマドランド

ノマドランド
映論言いたい放題

ノマドランド
2021年3月26日 公開
2021年6月23日 Blu-ray&DVDリリース
■監督:クロエ・ジャオ
■原作:「ノマド 漂流する高齢労働者たち」(ジェシカ・ブルーダー著/ 春秋社刊)
■出演:フランシス・マクドーマンド(ファーン)/デイブ(デヴィッド・ストラザーン)/リンダ(リンダ・メイ)/スワンキー(スワンキー)/ボブ(ボブ・ウェルズ)
■あらすじ:ネバダ州の企業城下町。その企業の倒産により郵便番号は抹消され、住民の多くは失業し移住を余儀なくされた。長年住み慣れた家を失ったファーンは、夫が残した愛車のバンを改造し、現代のノマド(遊牧民)として季節労働現場を渡り歩き車上生活を送ることになった。第77回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第93回アカデミー賞では作品、監督、主演女優の3部門を受賞した話題作。
© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
合評参加者:
 三浦佳子(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

三浦:この映画、最初に見たときはピンと来なかったんですよ。景色は綺麗だなと思ったんですけれど。主人公の生活の過酷さが見ていてつらかったですね。

akko:日本で「ノマドワーカー」というと、カフェでノートパソコンとスマホで仕事している人、というイメージがありますが全然違いますね。

和田:日本ではオシャレなイメージがあるけれど、どちらかというと放浪者のほうが近いかも。

akko:アメリカは工場が閉鎖になると住民がいなくなって、インフラもなくなって、そこに住めなくなるということが実際にあるそうです。しかもそんな場所だから住宅があっても資産価値はゼロ。年金は月5万円程度で、部屋を借りるのも厳しいというのが主人公が置かれた状況です。

和田:季節労働と言えば農場のイメージが強いですが、この映画ではAmazonの配送センターの仕事が、年末恒例の稼げる仕事として描かれていましたね。日本で言えば「これで正月が越せる」という感じでしょうか。

akko:ネットで調べたら、アメリカ在住の人が「あの会社はワーキャンパーの高齢者なしにはもう運営できない」とまで言い切っている人がいました。(ワーキャンパー=キャンプしながら働く人の造語)

三浦:じつは私もたまに車中泊するんですよ。野外フェスに行くときとか。結構楽しくて好きなんですが、それは帰る家があるからこそだと思います。

akko:確かにそうですね。ファーンも気ままに生きてはいますが、見ているとつらくなってきちゃって…

和田:監督の演出にもそう感じさせるところがありました。美しい自然が映し出されるもののどこか寒々しく、音楽は常に陰鬱で、一種の印象操作のような。

三浦:自然の美しさといえば、スワンキーが余命を察知して最後に出かけた先で見た光景は感動して泣いてしまいました。

akko:生きている間はゴージャスな邸宅とか高級車とか多額の預金とかが財産ですが、死ぬときに魂と共に持って行ける本当の宝はああいう「感動した経験や思い出」だけなんでしょうね。

和田:監督が中国人女性ということで、東洋的なスピリチュアリズムも影響しているのでしょうか。ところで監督の次回作はマーベルのアメコミものだそうですよ。

akko:ビックリですね。またお金の話で恐縮ですが、数十万円の車の修理代が用意できなくて姉に借金を申し込む姿を見ると、やはり経済力も同じくらい大事だと思いました。

三浦:一緒に暮らそうと手を差し伸べる人もいたのに、ファーンは全部断りますよね。

akko:彼女が若ければまだ良いのですが、年齢を考えると、頼れる相手がいるうちに受け入れたほうが良いのではとも思いました。

三浦:私も最初は理解できなかったんですが、自分の身に置き換えて考えると納得が行きました。きっと私も、まだ自分の力で生きていたいと断ると思います。

和田:ノマドの人たちって白人ばかりなんですよね。何でかなと考えたんですが、彼らのDNAにはカウボーイや開拓時代のフロンティア精神のようなものが刷り込まれているのかもしれない、なんて思いました。

akko:この映画、フランシス・マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン以外は本物のノマドの人たちが出演しているんですよね。

和田:プロデューサーも務めたフランシスはこの映画に並々ならぬ思いがあるようで、迫真の演技で本物にしか見えませんでした。

三浦:ノマドの人たちもまるでベテランの俳優のようで、貫禄すら感じました。

和田:ノマドの集会で、ウィリー・ネルソンの「オン・ザ・ロード・アゲイン」を皆で歌うシーンはちょっと宗教っぽかったですが…

akko:「ジョーカー」、「パラサイト 半地下の家族」、そして「ノマドランド」。アカデミー賞の作品賞は3年連続で経済的弱者を描いたものが来ましたね。

三浦:世相を反映しているのでしょうか。この映画は1回見ただけでは分かりにくいかもしれません。

和田:ソフトリリースもされることですし、映画館で見た人ももう1度見直してみるのも良いかもしれませんね(了)

T・ジョイ長岡 2021年6月オススメ映画

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2021年6月25日公開
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2021年6月25日公開
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