映論言いたい放題 Film 210 大怪獣のあとしまつ

映論言いたい放題

『大怪獣のあとしまつ』
2022年2月4日 公開
■監督・脚本:三木聡
■出演:山田涼介(帯刀アラタ=特務隊一等特尉)/土屋太鳳(雨音ユキノ=環境大臣秘書官)/濱田岳(雨宮正彦=総理秘書官)/オダギリジョー(ブルース=元特殊隊隊員)/ふせえり(環境大臣)/岩松了(国防大臣)/西田敏行(内閣総理大臣)
■あらすじ:人類を未曾有の恐怖に陥れた大怪獣が死んだ。河川に横たわる巨大な死体をどうするかで日本は大きく揺れる。インバウンド需要を見込んでそのままにしておこうという意見も出る中、死体は腐敗による体温上昇が起きる。腐敗で生じた有毒ガスの爆発・拡散の可能性により、第2の危機に見舞われた日本政府は、その事後処理に翻弄されていく。
© 2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会
合評参加者:
 三浦佳子(T・ジョイ長岡 映写担当)
 池田直樹(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

akko:日本が生んだ世界的大怪獣と思しき生物。あれがもし死んでしまったらどうなるのか?という映画ですね。

和田:怪獣を倒すために人類が戦うことは散々描かれてきましたが、この視点はなかった。本当に斬新です。

池田:この作品、賛否両論まっ二つですよね。否のほうが圧倒的ですけど…。

akko:池田さんはどちらですか。

池田:自分は残念ながらダメでした。あの予告編を見て完璧に『シン・ゴジラ』のような作品を期待しちゃったんですよ。そしたらまさかねえ。

akko:私は三木聡監督のファンで、あの独特のコメディセンスやノリが好きなんですよ。それでもあの予告を観ると「まさか全てを封印してシリアスな映画なのか」と錯覚してしまいました。

和田:そうなの?僕も三木作品が好きで、この映画もきっとやらかすだろうと思っていました。そしたら思った通りの展開+思った以上のシリアスシーンの出来栄えで満足しました。

三浦:私も三木監督の『時効警察』は好きなんですけどね。この映画はちょっと無理でした。面白いことをやろうとしているのは分かるんですが、まったくツボに入りませんでした。

和田:強烈な臭さを政府が「銀杏の匂い」と真面目に発表するとか、バカバカしすぎて面白いじゃないですか。

三浦:うーん、まったく(笑)

池田:どうせならシリアスかコメディか、どちらかに思い切り振ってほしかった。本当に期待していたんですよ。映画のオープニングで松竹と東映のロゴが出たときにはおおっ!て熱くなりましたから。見ているうちに今度は怒りで熱くなっちゃったけど(笑)

akko:そういう意味では宣伝方法の罪は大きいかもしれないですね。

三浦:この映画、アドリブ禁止だったらしいですね。濱田岳くんはアドリブの面白い俳優なのにそれが封印されちゃって、彼の良さが生かし切れていないように感じました。

池田:なんかキャストが無駄に豪華でしたよね。それにしても予告で「怪獣の名前は『希望』です」って出てきたでしょ?あの時点でこの映画は違うんだ、正統派じゃないんだっていうことに気付くべきでした。

和田:あの人を食ったようなノリがいいんですけれどねえ。怪獣が死んだ後の男女のキスが有名な写真「勝利のキス」のようだったり、バンクシーもどきの怪獣の絵が出てきたり、いろんなパロディやオマージュが満載で観ていて楽しかったですよ。

akko:土屋太鳳さんが「ユーモアの中に一貫して社会風刺が表現されている作品」とこの映画を表現していました。まさにそれなんですよね。社会的に許しがたい事ってあるけど、それを声高に糾弾するのではなくて、パロディにしているところが三木監督の懐の大きさだと思いました。

池田:とにかく観た人の記憶に刻まれる映画ですね、間違いなく。

三浦:語り継がれるでしょうね。いろんな意味で。

和田:映画が終わった後、観客から「え?え?」という声が聞こえてきたのには受けました。

池田:あのオチはすごかったですね。どうでしたか?あの終わり方については。

akko:これから公開される某新作に見事に橋渡しを果たしたような気がしました。

和田:いずれにしても映画は観ないと始まりませんし、語ることもできません。シリアス路線ではない、あの三木聡監督の作品だということを納得したうえで、ぜひご鑑賞を!

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© 2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

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