映論言いたい放題 Film 221 2022年ベスト映画

映論言いたい放題

コロナ禍での鑑賞にも慣れてきて、2022年は過去2年とは違い大きな影響なく映画を楽しめた年だったように思います。T・ジョイ系列の興行成績トップ3は、1位が『ONE PIECE FILM RED』2位が『すずめの戸締まり』3位が『トップガン マーヴェリック』だったそうです。T・ジョイ長岡も1・2位は同じ作品が並びましたが、3位に我らが継さの映画『峠 最後のサムライ』が入りました!
さて今回の参加者が選ぶベスト3はなんでしょうか。毎年恒例のそれぞれのベスト映画を紹介します。

参加者:
 田中大輝(T・ジョイ長岡 アシスタント・マネージャー)
 岩井康友(T・ジョイ長岡 映写担当)
 三浦佳子(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

田中大輝 ベスト3(T・ジョイ長岡 アシスタント・マネージャー)

1位は『すずめの戸締まり』です。新海誠作品は全部観ていますが、今回は久しぶりに新海さんらしい作品だと思いました。絵も本当にキレイで夜空の描き方とか、あれこそ新海作品の真骨頂ですよね。東日本大震災を題材にしてはいますが、天災はこれからも起こりうること。過去を描きながら、同時に未来も描いている作品で、私たちへの警鐘やメッセージも強く感じました。監督が鈴芽の声を担当した原菜乃華さんと来館したときに、僕の自作の「椅子」をほめてTwitterにアップしてくれたのも良い思い出です。

ブレット・トレイン』が2位です。タイトルのブレット・トレインとは、最高時速300キロで走行可能な日本の高速旅客列車=新幹線のこと。東京から京都に向かう車内で、運び屋のブラッド・ピットが次々と現れる殺し屋に命を狙われるというストーリーなのですが、最後にはスカッとしたオチが待っていて、気分よく観終わることができました。テンポ良く痛快で、何も考えず、楽しく観ることができる1本でした。

楽しく観られたというと3位の『トップガン マーヴェリック』もそうでしたね。やっぱりトム・クルーズはすごい。周りの人たちはしっかり年を取っているのにトムだけは変わらない。今作を観た後に1986年製作の『トップガン』を観たのですが、こんな風に話がつながっていたのかと気付く面白さもありました。

岩井康友 ベスト3(T・ジョイ長岡 映写担当)

昨年観賞した中から印象的だった3作品を選びました。1位は『トップガン マーヴェリック』です。映画としての完成度が本当に高い作品でした。アクション、主人公の葛藤、恋愛、…とにかく映画として観たいものを全部この1本で観せてもらったように感じました。観客の心をグイグイ掴んでくる展開に、最後は拍手喝采でした。圧倒的に楽しかった1本です。

2位は『太陽とボレロ』です。実は子どもの頃からしばらくピアノを習っていたのですが、音楽に親しみのある人独特の空気感が本当にリアルなんですよ。これはもしかしたら音楽をやっている人にしか分からないかもしれないのですが、普通の生活と音楽を両立させた生き方を、水谷豊監督が見事に描き出していました。存続が難しくなった地方の楽団が、ラストコンサートをすることなる話なので、普通だったら有終の美を飾る感動の展開が待っていますよね。でも水谷監督はバラバラな団員の様子を無駄に脚色せず、そのまま描いている。それが悲しくもあり、滑稽でもあり…キレイにまとめていないところが良かったです。

ちょっとマニアックな作品ですが、3位には『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を選びました。もともとガンダム好きなので、気になる1本でした。テレビシリーズの中の1話でしかない話を、なぜ映画化したのか不思議に思っていたのですが、観てみたらアクションシーンはCGでキレイになっているし、それまでとは全く違う絵で観られたしで納得でした。登場人物の過去などを掘り下げていたのもうれしかったですね。

三浦佳子 ベスト3 (T・ジョイ長岡 映写担当)

私のベスト3は、それぞれ全く趣が違う作品になりました。まず1位はインド映画の『RRR』です。植民地時代が舞台で、イギリス軍にさらわれた少女を探す男性と、英国側の男性がそれとは知らずに知り合って友情を育むんですが、ストーリーが二転三転していきます。とにかく熱い展開で目が離せない。上映時間3時間と長尺にもかかわらず、飽きることがありませんでした。演出も過剰で、それがまたカッコいいんですよ。「サーカスかよっ!」と突っ込みたくなるようなアクションは笑いながらも、拍手を送りたくなりました。

2位は『川っぺりムコリッタ』です。死生観という重いテーマを描きながら、ほのぼのとして感動もしてしまうというすごい作品でした。身近な人が亡くなったときの感情の動きとか、うまく出ていましたよね。パスカルズによる音楽もすごく良かったです!エンドロールの音を聞いているだけで涙が出てくるくらいジーンと胸に迫るものがありました。

T・ジョイ長岡の上映作品ではないのですが、3位は『GUNDA/グンダ』です。実は私、豚が大好きで、豚の親子のドキュメンタリー映画と知って観に行きました。環境音だけでナレーションや音楽が一切なく、牧場にいる動物たちの生活をただひたすら映し出していくだけなんです。その映像を観ているといつの間にか自分もその世界にいるような感覚になるという没入感がすごかったです。動物たちの気持ちを考えるようになって、表情も気になってきて…。モノクロで映像も美しかったですのが、映画館で観てこその作品です。自宅のテレビで観ていたら退屈して途中で止めてしまいそうな気がします(笑)

akko ベスト3(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」出演)

2022年のベスト1はエルヴィス・プレスリーの人生を描いた『エルヴィス』です。トラブルが多い人だったとは知っていましたが、まさかここまで壮絶な人生だったとは!エルヴィスが本当の自分でいられた時間は、ステージで歌っている時だけだったのではないでしょうか。バズ・ラーマンのあざとくて下品で過剰な演出が、実に素晴らしい!映画館に誰もいなかったら、叫んで踊りたくなるほどで、観ていて腰の辺りがムズムズしてきました。主演のオースティン・バトラーは、エルヴィスが乗り移ったのかと錯覚してしまうほどの成りきり振りでした。

2位は『メタモルフォーゼの縁側』です。ちょっとオタクな女子高生が、58歳の年の差を乗り越えて、75歳の女性と共通の趣味を介して友達になっていくという内容なのですが、そこに十代特有の自意識過剰とかこじらせが入ってきて、そのさじ加減が絶妙なんです。好きなものを好きと素直に言えること、そしてそれを誰かと共有できること、そのかけがえのない楽しさや幸福が素直に伝わってきました。芦田愛菜さんが大好きなコミックを読んでいるときの、満ち足りた表情がたまらなかったですね。

3位は『ザリガニの鳴くところ』です。原作はベストセラーのミステリー小説で、日本では2021年本屋大賞翻訳小説部門で1位を獲得しています。プロデューサーは読書好きで知られる女優のリース・ウィザースプーンが務めています。彼女は原作に大感動して、とにかく映画化したいと名乗りをあげたそうです。それにしてもあのオチには驚かされました。あの幕切れには賛否両論あるかもしれませんが、私がこれでよかったと思いました。

和田竜哉 ベスト3(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター)

1位に選んだのはアメリカ南東部、ノースカロライナ州を舞台にした『ザリガニの鳴くところ』です。ある青年の変死を受け、容疑者として湿地帯でたった一人暮らしてきた女性が逮捕されるのですが、彼女は否認し裁判で争うことになります。真相を追究するミステリーに加え、異端者たる女性に対する町の人間の強烈な差別意識、南部の男にありそうな女性に対する暴力など複数の要素が絡み合い、絶妙な物語が完成しました。弱者に寄り添う一部の人たちの優しさが心に染みます。また不要かと思えたエピローグでは驚愕の真実が明かされますよ。

土を喰らう十二ヵ月』が2位です。作家・水上勉の『土を喰う日々 わが精進十二ヵ月』を原案に、長野の山里で暮らす作家の営みを、1年半の時間をかけて丁寧に撮り上げた作品。季節の移ろいとともに、地のものを料理しありがたくいただくという、かつての日本人が当たり前のようにしてきたことを観せられて、真っ当に生きていこうと思いました。料理研究家の土井善晴さんが監修し、沢田研二さんが挑戦した料理の手さばきや出来栄えが見事で、お腹が鳴ること間違いなし。

3位にはジョーダン・ピール監督待望の新作『NOPE/ノープ』を選びました。『ゲット・アウト』『アス』と、こちらの想像の斜め上を行く物語を作り上げてきた監督なので、当然期待が高まります。その期待値を見事超えてくるのだから本当にすごい。1作目で白人と黒人、2作目では人間と地下のクローン人間、そして本作では人間と人間以外の生物、それぞれの対立をドキドキのスリラー仕立てで描いているので、楽しみながらも差別や選民意識の問題を考える機会を与えてくれるという、希有な監督です。

T・ジョイ長岡 2023年2月オススメ映画

『バビロン』
2023年2月10日公開

『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督最新作。狂乱の時代と呼ばれた1920年代のハリウッドを舞台に、スターを夢見る新進女優、サイレント映画の大スター、映画製作を夢見る青年の運命が複雑に絡み合っていく。


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『エンパイア・オブ・ライト』
2023年2月23公開

名匠サム・メンデス監督が、コロナ禍の状況で映画館存続への危機感からメガホンを取った話題作。海辺の町にあるエンパイア劇場を舞台に、その町で暮らす人々の絆、映画や映画館の魅力を描いた。


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リバティデザインスタジオ

新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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