映論言いたい放題 Film 216 NOPE/ノープ

映論言いたい放題

『NOPE/ノープ』
2022年8月26公開
■監督:ジョーダン・ピール
■出演:ダニエル・カルーヤ(OJ・ヘイウッド)/キキ・パーマー(エメラルド・ヘイウッド)/スティーブン・ユァン(リッキー・“ジューブ”・パク)
■あらすじ:ハリウッドで唯一の黒人が経営するヘイウッド牧場に、ある日空から異物が降り注いだ。それが当たった牧場主の父親はあっけなく亡くなってしまう。一緒にいた息子OJは直前に不可解なものを上空に見ていた。彼は妹のキキと共に、父に死をもたらしたものは一体何なのか、真相を探り始める。
© 2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
合評参加者:
 田中大輝(T・ジョイ長岡 アシスタント・マネージャー)
 岩井康友(こうすけ)(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

岩井:予告を観たときは怖い感じがしたんですよ。実は怖い映画が苦手で、大丈夫かな?と思いながら鑑賞したら、謎解きやSFの要素が強くて、しかもワクワクするシーンも多くて。もしホラー系だと誤解している人がいるなら、大丈夫だよって伝えたいですね。

akko:私はキャッチコピーの「最悪の奇跡」という言葉がすごく気になってしまって。映画として傑作だったとしても後味が悪かったらイヤだなあと思いつつ観ました。

田中:何系映画と言えば良いのか、確かに迷いますね。スリラーっぽくて、ビックリするシーンもあって。

和田:ジョーダン・ピール監督は、毎回違うテーマで意表を突いてきますからね。

岩井:オープニングのチンパンジーのシーンは意味が分からない。分からないままに進んで途中からだんだん分かってくる。その辺りの展開が絶妙でした。

和田:ネタバレせずに語るのは大変ですが、人間が他の生物を身勝手に支配しようとしたことで起きた悲劇ですよね。それが伏線となって、OJの家族に起きた悲劇と、その後の怒濤の展開へとつながっていきます。

田中:結局、欲張ると痛い目に遭うということでしょうか。人間がそれ以外のものと関わるときには何があるか分からない。その怖さがよく伝わってきました。

岩井:2人の男性が象徴的ですよね。牧場で馬を乗りこなす主人公のOJと、チンパンジーの悲劇を乗り越えたジューブ。いろいろな謎が対照的な2人を通して、ストーリーが進みながらどんどん回収されていく。主人公の彼は最高の調教師でしたよね。

和田:さらに深読みすると、ピール監督は黒人でメインキャストもつねに黒人。1作目で人種差別、2作目で格差社会を描いて、今回も黒人の立場から観たメタファーを入れてきた気がします。

岩井:なるほど、確かにそうですね。

和田:それが象徴的に出ていたのが、映画の原型になった作品に登場する最初の俳優が、馬に乗った黒人俳優だったという事実。それをベースに、主人公をその俳優と子孫という設定にしたところに矜持を感じます。

akko:コロナ禍を受けて監督は「このままではハリウッドがどうなるんだろう」という不安を感じて、とにかく面白いエンターテインメントを作るんだという気構えで脚本を書いたそうです。

岩井:分かりやすい戦いのシーンとか、謎の存在が明かされていくシーンとか。次の展開が想像できてしまうところもありましたが、それでも引き込まれました。

akko:監督は日本のアニメが好きみたいで、『AKIRA』のバイクシーンが出てきましたよね。

田中:『AKIRA』大好きなんで、あの場面ではおーっ!と思いました。

akko:『エヴァンゲリオン』にもオマージュを捧げて場面があるらしいですよ。

岩井:ああ、使徒を連想させる場面がありましたね。ネタバレになるからどういうシーンかは言えませんが……。

和田:既視感があったのは、そのせいか(笑)それにしてもこの映画、話し始めると本当に話題が尽きないですよね。

田中:何だかもう一度観たくなってきました。この映画は十人十色で、観た人によってきっと受け止め方とか、心に引っかかる部分が違いますよね。それが何だったのか、語りたくなります。

岩井:自分の中でいまだに消化不良なのは「靴」のシーンです。最後にも出てきますよね。あれが意味するのは一体何か。観る度に「こういう意味だったのか」と分かったり、気づいたりすることがありそうですね。

和田:ピール監督の映画は全てそんな作品ばかり。もし前作2本を未見の方は、ぜひそちらも合わせて見てほしいですね。

T・ジョイ長岡 2022年9月オススメ映画

『さかなのこ』
2022年9月1日公開

さかなクンの自伝的エッセーを実写映画化。お魚が大好きなミー坊は他の子どもとちょっと違う個性的な子。好きなことに一直線で、不思議な魅力を持つミー坊を応援するみんなに囲まれ、自分の夢へと近付いていく。さかなクン本人が「ギョギョおじさん」として登場するのも見所のひとつ。


© 2022「さかなのこ」製作委員会

『ブレット・トレイン』
2022年9月1日公開

伊坂幸太郎の原作小説をハリウッドが映画化。東京発・京都行の「ブレット・トレイン」新幹線を舞台に、10人の殺し屋たちがバトルを繰り広げるクライムアクション。主人公の運の悪い殺し屋を演じるのはブラッド・ピット、真田広之を始め日本人キャストも熱演している。


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リバティデザインスタジオ

新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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