映論言いたい放題 Film 198 2020年ベスト映画

2020ベスト映画
映論言いたい放題

マイスキップ誌上で毎年行っていた「年間ベスト映画」特集。今年はWebSkip上で開催いたします。
2020年は新型コロナウイルス感染症でいろいろな業界が影響を受けました。
映画業界も例に漏れずコロナ禍を受けて、映画の公開や撮影の延期、劇場の一時閉鎖などの事態に陥りました。
T・ジョイ長岡も4月の途中から5月までクローズ。その間も来たるべき上映再開のために、スタッフの方たちは旧作上映のデータ準備、感染症対策などをバックヤードで行っていたそうです。
6月になって劇場をオープンしてからも、連日何かしら上映延期や中止などの連絡が相次ぎ対応に追われる日々だったと、支配人の功刀さんやスタッフの池田さんは、その頃の様子を振り返ります。 そんな中、10月に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は19年ぶりに日本の興行収入1位の記録を塗り替えるという快挙を成し遂げました。ステイホームの時だからこそ、映像作品に救われた方もいるのではないでしょうか。
まだ終息は見えない状況ですが、2021年も映画を楽しめる1年でありますように。
それでは、参りましょう。2020年ベスト映画!

参加者:
 功刀弘暁(T・ジョイ長岡 支配人、「月刊シネマガイド」出演)
 池田直樹(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「月刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「月刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「月刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11chでリピート放送

功刀弘暁 ベスト3(T・ジョイ長岡 支配人)

TENET テネット

1位は『TENET テネット』です。最近監督の名前で映画を選ぶことが少なくなりましたが、ノーランは別格です。彼の作品にはいつも必ず驚きの映像体験が待っています。コロナ禍でいろいろあった1年ですが、予定通り上映されて、ノーラン作品を観られたことは本当に嬉しかったですね。圧倒的なクオリティと難解さで、1回では追いつかなくて、Blu-rayを買ってパンフレット片手に観たんですが、まだまだ分からないところがあって何回観ても面白い。次回作も期待しています。

パラサイト 半地下の家族

ただやはりコロナ禍の影響で今年はベスト映画を選ぶのに苦労はありました。まだコロナがそれほど流行する前に公開された『パラサイト 半地下の家族』が2位です。アカデミー賞を取った翌日から急に集客が伸びて満席になる日もありました。富裕層に寄生する家族の姿をコミカルに描きつつ、韓国社会の抱える闇も同時に描き見応えがありました。半地下という聞き慣れない言葉の意味は、そういうことだったのかと思わされました。

罪の声

3位は『罪の声』です。『鬼滅の刃』と上映時期が重なっていなければ、多分もっと興行が伸びた作品だと思います。小栗旬さんと星野源さんの共演が見もので、特に星野源さんの演技力はすごかったですね。サスペンスとしても上質で、見応えのある1本でした。

池田直樹 ベスト3(T・ジョイ長岡 映写担当)

AKIRA

僕の1位は1988年の映画『AKIRA』です。じつはずーっとスクリーンで観たいと願い続けてきて、それが2020年にリバイバル上映されたんですよ。ようやく夢が叶いました。AKIRA関連のコレクションをロビーに展示したところ、来場者から好評だったのもうれしかったですね。オープニングの音がすごくて、今まで映画館で聴いた中で一番の音響だったんじゃないかと思います。今思い出しても鳥肌が立ちます。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

2位は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』です。テレビアニメを観ていたのでその続きかなくらいの感覚で観たら、良い意味で裏切られました。とにかく後半からの流れがすごかったですね。アニメで煉獄杏寿郎を観たときは「眼がギョロギョロしていて変なヤツ」くらいにしか思っていなかったんですが、映画を見終わった後はすっかり彼の虜になっていました。それにしてもとんでもない作品を作ってしまいましたよね。確実にアニメ作品のハードルを上げました。おそらく今後は「鬼滅」を目指して作っていくような流れになるのかもしれないですよね。

ミッドナイトスワン

セカンド上映の「ミッドナイトスワン」が3位です。トランスジェンダーの役を草なぎ剛さんが演じていて、彼らの心情、取り巻く状況など、見ていて考えさせられました。どちらかというと暗い作風なので万人にはお勧めできませんが、僕は心に残った1本です。

akko ベスト3(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」出演)

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

今年は異例の状況でしたが、久しぶりに映画館に行けたときの喜びはひとしおでした。映画館再開から1ヶ月ほど経ったときに観た『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』が1位です。ウディ・アレン監督のNYに対する愛がこれでもかとあふれている作品でした。最後にちょっと皮肉なオチが待っていますが、あの洒脱で軽い終わり方はいかにもアレンらしい感じでよかったですね。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

2位は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』です。鑑賞前に「劇場ですすり泣きが聞こえてくる」という評判を聞き、そこまでか?と思って観たのですが、確かにその通りの感動作品でした。『鬼滅』を観て育った子どもたちは幸せだとすら思いました。あの作品には範を示してくれる素晴らしい年上の人たちがたくさん出てきますから。大人が観ても心動く深い作品だと感じました。

ジョジョ・ラビット

今となっては遠い過去のようなのですが、コロナ禍以前に観た『ジョジョ・ラビット』が3位です。ナチス政権下のドイツでレジスタンスとして活動する母親を持つ少年ジョジョの物語です。彼は純粋で周囲の言うことを鵜呑みにしており、ヒトラーを「空想の親友」として生きているというトンデモ設定に驚かされました。ジョジョが精神的に成長するにつれて妄想のヒトラーが変わっていくところなど面白い表現がたっぷり。映像ならではの楽しみがたくさんある映画でした。

和田竜哉 ベスト3(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター)

ラストレター

昨年5月の緊急事態宣言後、一席空けの販売方法に違和感を覚えたものですが、全席販売に戻った際には逆に空いていたほうが快適だった気がしたりして、人間の慣れには驚かされます。
さて1位の作品ですが、私は岩井俊二監督の『ラストレター』を選びました。正面から純愛を描いてクサくならないのはさすが。物語だけを追えば切ないを通り越して悲惨な部類なのですが、しっとりとした空気感と画面から溢れる優しさで、それも気にならなくなります。極めつけは夏のワンピースを着て佇む二人の少女のカット。もうたまりません。

1917 命をかけた伝令

2位は『1917 命をかけた伝令』です。戦争の臨場感をどう表現するか考えて選んだのが、ワンカット長回し撮影だった訳ですが、これが半端ではありません。常に動き回る人とカメラ、次々に降りかかるアクシデント、どうやって撮ったんだろうと思うシーンの連続で、これぞまさに映像マジック! アカデミー賞作品賞・監督賞を別作品にさらわれましたが、本当に受賞に値したのはこちらの作品なのではないでしょうか。残念でなりません。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

そして3位には、2020年の映画界を象徴する作品『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を選びます。巣ごもり時期に我が家もストリーミングサービスに加入し、たまたま観たのが「鬼滅の刃」のテレビアニメ。見事にハマり一気に観てしまいました。劇場版はひねくれた大人の心にも刺さる意思の強い作品でした。

T・ジョイ長岡 2021年2月オススメ映画

すばらしき世界

映画『すばらしき世界
2021年2月11日公開
これまでオリジナル脚本で映画を撮り続けてきた西川美和監督が初めて小説を映画化。直木賞作家・佐木隆三の作品「身分帳」を原案に、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯・三上の再出発を描く。三上役を演じるのは役所広司。彼を取り上げてドキュメンタリー番組を作ろうと近づくディレクターとプロデューサーを仲野大賀、長澤まさみが演じる。生き別れの母を探すことを条件に引き受ける三上だったが、果たしてどうなるのか。
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

あの頃。

映画『あの頃。
2021年2月19日公開
新潟県出身の劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」の実写映画化。
劔役を演じるのは松坂桃李。大学院受験に失敗し、どん底生活の彼を救ったのは松浦亜弥だった。「ハロー!プロジェクト」のアイドルに夢中になった彼は、イベントで知り合った仲間たちとヲタ活に励み、遅れてきた青春を謳歌する。しかし時は流れいつしか違う道を歩き始めることになるのだが…。

©2020「あの頃。」製作委員会

リバティデザインスタジオ

新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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