お宝いっぱい!新潟県立歴史博物館開館20周年記念「特別公開 この逸品」
2000年8月の開館以来、歴博(れきはく)の略称で親しまれている新潟県立歴史博物館。20周年を迎えたのを記念して「特別公開 この逸品」展が開催されている。考古・歴史・民俗など幅広いジャンルを網羅し、各担当研究員がそれぞれ見どころを解説しており、例えるなら「幕の内弁当」のようなバラエティに富んだ楽しい展覧会だ。民俗学を専門とする主任研究員の大楽和正さんの案内で、早速みてみよう!
※会期中、展示替えがあります
石器にワクワク
県立歴史博物館の所蔵品の数は大楽さん曰く「何万点単位ですね。私の研究している民俗学だけでも6千点ほど所蔵しています」。その中から、選りすぐりの計58点(会期中入れ替えあり)が展示されているのが今回の企画展だ。しかし「石器」などは展示名称としては1項目だが、実際には尖頭器だけでも20以上あるため、「マスコミにはおよそ500点を展示と案内」している。
会場に入ると最初に目に止まったのは「開館にいたるまで」という思い出写真コーナーだ。建設中の様子から、展示作業に励むスタッフの人たち、いよいよ開館のテープカットの瞬間などが紹介されていた。
展示のトップバッターは遺跡だ。じつは石器などは違いがよく分からないのだが、研究員の解説を読むと俄然面白さが増してくる。例えば「長峰団地西遺跡」は歴博のすぐ近くの長岡市西津町にあるが、そこで小さな石のかけらが見つかったことで、縄文時代よりもさらに以前の旧石器時代から、この辺りで人が暮らしていたことが分かったのだ。
石器はすべて意味があって使われていたものばかり。いわば「生活道具」だ。それが1万年以上の時を経て、今こうやって私たちの目の前にあるんだと思うと、ちょっとワクワクしてきた。
刀剣女子必見!
最近、刀剣がブームだ。きっかけは名刀を擬人化したゲームで、それがきっかけで数年前から刀が人気となり「刀剣女子」という言葉まで誕生した。
そんな刀好きの人たちにとっては、注目は平安時代に作られたとされる初公開品「太刀 銘弘次」だ。この刀には、お伽噺めいた摩訶不思議な言い伝えがあるのだが、果たしてそれはどんなものか。気になる方はぜひ館に足を運んでチェックを!
展示で大発見!
今回の展覧会は2020年12月19日から2021年2月28日までの2ヶ月あまり。3期に分かれ途中入れ替えがあり、すでに見られない作品もあるのだが、せっかくなので紹介。
そのひとつが「狩野探幽筆 堀直寄像」だ。これは2011年に開催された企画展「越後の大名」でも展示され当時は絵師不明としていたが、そのチラシを見た大学の美術史研究者から連絡が来た。曰く「これは狩野探幽の絵ではないか」。それをきっかけに調査したところ、紛うことなき探幽の作と判明したそう。「展示公開したことで思わぬ発見につながった例です」と大楽さんは紹介した。
預かる大切さ
展示品の中に木造の狛犬を発見! 柏崎市西山町の二田物部神社(ふただもののべじんじゃ)の所蔵品で室町時代の作と考えられている。2007年に発生した中越沖地震の時「宝物が危ないということで、震災発生から数日後に(当館が)預かってきた」ものだ。あれから十数年経ったが、いまだ戻せる状況になく、いつか返せるその日まで館で大切に保管していくそうだ。「博物館の役割のひとつに文化財の保護や救出があります。これはそれを伝える資料のひとつです」
神社の狛犬は台座の上に乗っているため、見上げることがほとんど。それが目が合う高さでじっくり見られるのも珍しくて新鮮だった。しかし狛犬が本来いるのは神社。早く元の場所に戻れますように、と願いを込めて見つめた。
交流普及の役割
歴博ではミニ石仏作り、金印作り、切り絵など、企画展や季節にちなんだ体験プログラムを定期的に行っている。交流普及を担当する研究員には「オリジナルプログラムを作ろう」というこだわりがあり、なるべく歴博ならではの企画を考えているそうだ。
体験プログラムには大切な役割がある。たとえば以前「小判を作ろう」というプログラムを行ったときのこと。まずは展示で見た小判の姿を描いてみましょうと言うと、ほとんどの人がきちんと描けなかったのだとか。「体験プログラムで小判を作った後だと、皆さんしっかりと描けます。人って意外と見ているようで見ていないんですね。そのようにプログラムを通してより理解が深まることがあります」
うーん、すぐにでも体験したくなってきた。でもこういうのって子ども向けなのだろうか。「結構人気で、大人の人も参加していますよ」。なるほど、機会があったらぜひ参加してみたい。
江戸時代版ズーム、佐渡金銀山絵巻
コロナ禍を受け、昨年はリモートワークを初めて経験した人もいるのではないだろうか。そのときに活躍したのが、ズームをはじめとするオンラインでミーティングができるツールだった。
実は江戸時代にも、ズームのようなものがあったのだ。ダイレクトに相手と繋がって双方向、というわけにはいかないが、遠隔地にいる相手に現地の状況を詳細に伝える手段として「絵巻」が使われていたのだ。江戸の幕閣(老中)のもとに提出されたという記録もある。
江戸から赴任する佐渡奉行にも金銀山の稼ぎの様子を説明する必要があった。しかし、鉱石を掘ってから小判にまで仕上げるまでの一連の工程は複雑難解で、現場を視察する機会も限られている。佐渡奉行にわかりやすく現場を説明するために描かれたのが佐渡金銀山絵巻だったのだ。
「坂の上の雲」の副官は絵も上手
展示には日露戦争に従軍した軍人・山内保次(やまのうちやすじ)のスケッチもあった。じつは山内はあの會津八一の幼なじみで、司馬遼太郎の「坂の上の雲」の主人公・秋山好古の副官を務めた人物でもあるのだが、「え?本職は画家ですか!」と言いたくなるほどの絵のうまさにビックリ。
それでは1枚だけチラ見せ。他の作品も見応えありで必見です。
昨年の顔!光り物
新型コロナウイルス感染症の流行にともなって、昨年脚光を浴びたのが妖怪アマビエさまだった。アマビエは肥後国(熊本県)に1846年に出現したと伝わっている。「これから6年は豊作が続くが疫病が流行る。私の姿を写して人びとに見せよ」と告げて去っていったのだとか。このアマビエさま伝説は、全国各地に似たものがある。
そのひとつが越後国福島潟に現れた「光り物」だ。何だかルックスがアマビエさまに似ている。「こうした予言をする妖怪は他にも全国各地にいる」そうだ。
昨年、SNSに歴博の「光り物」がアップされたときに「あやかりたい」とモニターの前でうやうやしい気持ちで眺めたことを思い出した。
館所蔵のお地蔵さま
案内してくれた大楽さんは、新潟県石仏の会と歴博共催の2013年度の企画展「石仏の力」を担当した研究員だ。それはおよそ100基の石仏を展示する、前代未聞の展覧会だった。
今回の企画展では館所蔵の、五泉市でツツガムシ除けとして信仰されていたお地蔵さまが展示されていた。じつはこれ「石仏の力」展のために調査に入ったときに譲り受けたもの。ちょうどそのとき、虫送りのお地蔵さまが入れ替え時期を迎えていた。古いものは魂抜きを行い後は処分されると聞いた大楽さんが、それならばと引き取ったいきさつを話してくれた。
展覧会の見どころ
館長の斎藤良人さんに見どころをたずねた。「20周年を迎えることができたのは来館者のご支援のたまもの。それに応えて今回は各研究員が収蔵品から選んだものが展示されていますが、中にはこれが初公開というものあります。研究員のコメントを読みながらじっくりと見ていただければと思います」
大楽さんは「以前展示したものとは違った見せ方をしていて、また別の角度から楽しめるものもあります。博物館20年のあゆみも分かるような展示内容になっていて、常設展料金で企画展も一緒に楽しめるようになっていますので、ぜひ合わせてご観覧ください」と話してくた。
新潟県立歴史博物館
長岡市関原町1-2247-2 TEL:0258-47-6130
開館20周年記念「特別公開 この逸品」
2020年12月19日〜2021年2月28日(途中展示替えあり)、9:30〜17:00、月曜休館
常設展観覧料でご覧いただけます(一般520円、高校・大学生200円、中学生以下無料)