映論言いたい放題 Film 212 とんび

映論言いたい放題

『とんび』
2022年4月8日公開
■監督:瀬々敬久
■出演:阿部寛(市川安男・ヤス)/麻生久美子(美佐子・ヤスの妻)/北村匠(旭・ヤスの息子)/薬師丸ひろ子(たえ子)/麿赤兒(海雲)/安田顕(照雲)
■あらすじ:瀬戸内海に面した備後市。日本一不器用な男・ヤスは、愛する妻・美佐子の妊娠に喜んでいた。しかし幸せな時も束の間、美佐子は事故で突然他界してしまう。悲しみに沈むヤスだったが、人情に厚い町の人たちが彼を支え、残された息子・旭の子育てに協力してくれるのだった。重松清のベストセラー小説の映画化。
© 2022「とんび」製作委員会
合評参加者:
 三浦佳子(T・ジョイ長岡 映写担当)
 田中大輝(T・ジョイ長岡 アシスタント・マネージャー)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

和田:重松清さんの『とんび』は2012年にNHKで、2013年にTBSでそれぞれテレビドラマ化されていますよね。

akko:それでも映画化に踏み切ったということは、3度目の映像化でも勝算があったということですよね。実は原作もドラマも未見で鑑賞したのですが、納得の感動作品でした。

田中:平成生まれの自分にとっては、マンガや映像などでしか見たことがない世界やモノが描かれているのが新鮮でした。

三浦:私は若干懐かしいかな…という感じで。

akko:むむ、そうですか。私は相当いろいろ懐かしかったです(笑)

田中:この映画の肝は何と言っても阿部寛さん演じるヤス。魅力的な父親でしたよね。子育てを経験した人が見たら感動はなおさら深いんでしょうね。

akko:これは親子の物語なので、子どもがいなくても親から育ててもらったことを思い出すという視点でも感動できるように思いました。

田中:ああ、それはありますね。僕自身映画を観ながら父のことを思い出して、自分もこんな風に社会に送り出してもらっていたのかと思ったらグッと来ました。

和田:昭和37年から始まって、最後は令和まで。まさに大河ドラマ的な作品でしたね。まさかここまでの長い時間を描くとは思っていませんでした。ちょっとドラマ『北の国から』を連想させますよね。特に阿部寛さんの服装とか考え方とか。

三浦:完璧に五郎さんでしたね。途中でヤスが「百歳まで生きる」宣言をするじゃないですか。これは逆に死亡フラグだと思って冷や冷やしてしまいました。

akko:私もです。あ、こんなこと言っちゃって。きっと5分以内に死ぬなと思いました。

三浦:それにしても本当に不器用な父親でしたよね。愛情たっぷりなのにそれをうまく表現できないもどかしさ。逆にそれがとても愛おしかったです。それは阿部さんはどこかコミカルな雰囲気があって、あのキャラクターに独特の味を出しているように感じました。

和田:モデル出身で二枚目で売っていた頃のイメージはどこへやら、酔っ払ってケンカはするわ、おならはするわ。いろいろすごかった。

akko:そうですね。でも私は下着姿でおならしてもハンサムだなあ、と思いながら見ていました。私はこの映画、父と子ももちろん良かったんですが、それを取り巻く町の人たちの愛情に感動しながら見ていました。特によかったのが安田顕さん演じる照雲さんですね。

和田:町ぐるみで子育てっていうのも『北の国から』っぽいですよね。

三浦:みんなが見守っている感じがとても良かったです。

akko:まあ年を取ったからそう思えるわけで、もし十代の頃にあんな人間関係のコミュニティにいたら、居心地が悪かったでしょうけれど。

田中:都会の若い世代の人が見たらどう思うんでしょうね。こんな人間関係の濃密なところはなかなかないでしょうから。

三浦:若い時には正直イヤかもしれないですよね。息子も反抗期に一時期、町の人たちと疎遠になっていたような描写がありましたよね。お世話になった和尚さんのお見舞いにも行かないで。あのときの父親のセリフが、とても良かったです。

和田:さすが小説家の書いた物語が原作なだけあって、ところどころに泣かせる言葉が散りばめられていて…。

三浦:薬師丸さんの「人生山あり谷ありのほうが人生の景色がきれい」とかね。こんなことを言ってくれる人が近くにいたらいいなと思いながら見ていました。

和田:監督はあの『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督ですからね。長岡の皆さん、ぜひこの映画も盛り上げていきましょう!

T・ジョイ長岡 2022年5月オススメ映画

『流浪の月』
2022年5月13日公開

事情があって家に戻ることを嫌がっている10歳の少女・更紗。雨が降る公園でびしょ濡れになって困っていた彼女を助けた19歳の大学生・佐伯。更紗はそのまま佐伯の家で2ヶ月を過ごし、その年月を世間は「女児誘拐事件」として扱った。そして15年後。被害者と加害者の烙印を押された二人は偶然の再会を果たしてしまう。


© 2022「流浪の月」製作委員会

『ハケンアニメ!』
2022年5月20日公開

新人の斎藤瞳は連続アニメで夢の監督デビューが決まり喜んでいた。しかし気合いが空回りし製作現場の空気はイマイチだった。さらに彼女のライバルは天才監督と呼ばれる王子千晴の復帰作という大きなプレッシャーもあった。アニメ界で覇権を取るのは誰か。一筋縄ではいかないスタッフや声優たちも巻き込んでの熱い戦いが始まる。


© 2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

リバティデザインスタジオ

新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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