映論言いたい放題 Film 229 こんにちは、母さん

映論言いたい放題

『こんにちは、母さん』
2023年9月1日公開
■監督:山田洋次
■出演:吉永小百合(神崎福江)/大泉洋(神崎昭夫)/永野芽郁(神崎舞)/宮藤官九郎(木部富幸)/田中珉(イノさん)/寺尾聰(荻生直文)
■あらすじ:大企業の人事部長としてストレスを抱えながら働いている神崎昭夫。妻とは別居中で、大学生の娘・舞ともうまく行かず、悩みの多い毎日を過ごしていた。久しぶりに下町で暮らす母親を訪ねたところ、なんだか様子がおかしい。どうやら恋をしているようなのだ。戸惑う昭夫だったが、お節介な下町の人たちと接するうちに、徐々に心がほぐれて行く。
© 2023「こんにちは、母さん」製作委員会
合評参加者:
 大竹文惠(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

akko:山田洋次監督、91歳にして90本目の記念すべき映画です。

和田:男はつらいよシリーズだけでも、50作品撮っている方ですからね。そもそもはテレビドラマから始まって、最終回で寅さんが死んじゃうんですよ。そしたらクレームが殺到しちゃって…。映画で生き返らせたら、それが国民的映画になったという、すごい作品ですよね。

akko:盆と正月に必ず公開されて。一時期は「寅さん」が日本の風物詩だった時代もありましたね。

大竹:そうだったんですか。年2作品を毎年作り続けるって、すごいバイタリティのある人ですね。

和田:だから90歳を超えても、こうして新作を届けられるんでしょうね。山田監督は「寅さん」の撮影で何度か県内を訪れたこともありますが、2014年公開の松竹映画『小さいおうち』では長岡ロケも行ったんですよ。

akko:そのとき空き時間にT・ジョイ長岡で『レ・ミゼラブル』をご覧になったそうです。館内のどこかに、山田監督がお座りになった座席があるはずなんですよ。

大竹:あ、最近、椅子の入れ替えをしてしまったので…。残っていたらプレミアでしたね(笑)実は私にとってこの作品は、初山田洋次作品になるんですよ。

akko:なるほど。それでいかがでしたか。

大竹:テンポが昔のテレビドラマみたいでゆっくりでしたよね。独特の雰囲気を感じました。

和田:それが山田洋次作品なんですよ。

大竹:おそらく観に来ている人はそれが好きで、来られているんでしょうね。下町風情を感じるところも良かったですね。

akko:この映画の舞台は墨田区の向島です。吉永さん演じる福江が営む足袋屋のモデルになったのは、創業慶応3年(1867)の老舗「向島めうがや」だそうですよ。

大竹:そうなんですか。それにしても「母さん」役の吉永小百合さんは美人ですね。ビックリしました。まだ60代くらいでしたっけ?

akko:あまりにも美しすぎて年齢不詳ですよね。50代でも通りそうです。

大竹:大泉洋が結構ワガママで。もう中年なのに、母親の前ではいつまでも子どものままで…。

akko:でしたね。子どもって親の前に出ると、いくつになっても幼い頃に戻っちゃうんですよね。私も「つい、甘えちゃうんだよねえ」と思いながら、観ていました。

和田:神崎はエリートとして成功したけれど、おそらくその仕事のせいで家庭が壊れた。若い頃、イヤでたまらなくて飛び出した家にまた戻ってきてしまうというね。

大竹:お母さんがボランティアでホームレスの支援活動をしていますよね。活動仲間のお煎餅屋さんのせんべいを食べて「こういう仕事は裏切らない」って神崎が泣くシーンにはグッときました。

和田:山田監督は中心人物だけでなく、脇役の使い方がすごく上手い。今回もそれが遺憾なく発揮されていましたね。

akko:私はラストシーンの花火が良かったです。映画が終わった後、登場人物たちのその後を考えることがよくあるんですが、おそらく神崎はこれから毎年花火を見る度に母のことを思い出すんだろうなあと、想像しました。

大竹:きっとあの後、神崎はお母さんと下町暮らしを続けるんでしょうね。祖母と孫の関係も理想的というか。うるさいことを言わずにおいしいご飯を一緒に食べて、ただ見守る。それだけで伝わる事ってあるんですね。

和田:別居とかリストラとか、暗い話を描いているはずなのに、観た後「人生っていいものだな」って前向きになれる。こんなファミリードラマを描ける人はもう他にいません。いつまでもお元気で頑張ってください!

T・ジョイ長岡 2023年10月オススメ映画

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2023年10月6日公開

わずか19秒で悪を始末する伝説の請負人ことロバート・マッコール。通称イコライザーと呼ばれていた彼は、リタイアしてイタリアの田舎で静かに暮らしていた。しかし悪の世界はひっそりとマッコールに忍び寄っていた。


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新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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