映論言いたい放題 Film 227 君たちはどう生きるか

映論言いたい放題

『君たちはどう生きるか』
2023年7月14日公開
■監督・脚本・原作:宮崎駿
■声の出演:山時聡真/菅田将暉/柴咲コウ/あいみょん/木村佳乃/木村拓哉
■あらすじ:戦争が始まり母を空襲で亡くした少年・眞人。間もなく父は母の妹ナツコと再婚し、疎開を兼ねて父と共に母方の実家の田舎へと引っ越す。屋敷の裏にはアオサギが住む不思議な洋館があった。そこは大叔父が館内で忽然と姿を消してしまったという、いわくつきの建物だった。
© 2023 Studio Ghibli
合評参加者:
 市川美乃里(T・ジョイ長岡 アシスタントマネージャー)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

akko:今回、10年ぶりの宮崎駿監督作品でしたが、なんと公開前の宣伝を一切しないという大胆な戦略で…。プロデューサーの鈴木敏夫さんが「何も情報がないほうが楽しみが増える。先に知ると喜びを奪うことになる」と言っていましたね。

和田:情報をほとんど出さずにヒットした「THE FIRST SLAM DUNK」を参考にしたというような発言もありましたが、あれとは全く状況が違うでしょとツッコミを入れてしまいました。紹介する立場としては本当に大変ですよ。

市川:今回の作品は宮崎作品の集大成のようでした。過去作品へのオマージュを感じるシーンもありましたし。どこまで話して良いのか難しいですが、大叔父が積み木をするシーンとか…。

和田:ああ、世界を象徴する13個の積み木ですよね。

市川:あれはおそらく「13」という数に意味があって、ジブリの過去13作品を示唆していると思うんですよ。

akko:なるほど。

市川:冒頭で眞人が靴を脱ぐシーンが、トトロのメイちゃんみたいだったり。彼が魚を殺すシーンは「もののけ姫」のアシタカを彷彿とさせたし、長い間ジブリ作品を観てきた人なら、何かを思い出させるようなシーンが全編に敷き詰められているように感じました。あの不思議な塔はまるで三鷹のジブリ美術館みたいだったし。

和田:冒頭がいきなり空襲のシーンから始まって「風立ちぬ」のような戦争をテーマにした作品かと思いきや、後半は完全なファンタジーでしたね。2つの物語が同時進行しているような印象を受けました。

市川:そうですね。まるで4時間くらいの映画を観たような気持ちになりました。

akko:宣伝なしということで、私もあえて情報は一切仕入れずに鑑賞しました。だから吉野源三郎の小説の映画化だと思いこんでしまって。最初は「眞人?あれ、コペルくんはいつ出てくるんだ?」と混乱しました。

和田:あくまでもタイトルを借りただけで、内容は全く違いました。ただ同名小説が主人公・眞人にとって意味を持つ作品という形で登場はしましたね。

akko:観ているうちに、唯一公開されていたガッチャマンみたいな不思議なキャラクターが主人公なのかと思い直したのですが、これも違っていて。

和田:今回、声優の発表もなかったので、「これはあの人」みたいなイメージや先入観を持たずに観られたのは、すごく良かったですね。

市川:ああ、でも私木村拓哉さんは第一声で気づきました。実は高校生のときに「ハウルの動く城」を観て木村さんのファンになったんですよ。

akko:それにしても引退宣言からのこの新作。宮崎監督は本当にすごい人ですね。

和田:いやあ、あんなウソならいくらでもついてほしいですよ。

市川:私はこの映画を2回鑑賞をしたんですが、見れば見るほど、理解力も高まっていくし、どんどん好きになるというか。飲み込むのに時間がかかる作品ではありますが、それだけに何度も観たくなります。

akko:小説でも10代、20代、30代と人生の節目で読む度に、自身の心の変容や成長を実感できて、一生の友にしたくなる作品ってありますよね。この『君たちはどう生きるか』はまさにそんな一本だと思います。

市川:確かにそんな作品ですよね。宮崎作品のBlu-rayボックスを持っているのですが、過去の宮崎さんの作品をまた観たくなりました。

akko:今観たいのは何ですか?

市川:うーん……『もののけ姫』かな。

akko:宮崎監督は日本の宝ですよね。同時代に生きて、公開の度にリアルで作品を観られて、映画ファンとしては本当に幸せなことだと感じます。

和田:80代でこんな作品を作るのは体力的に本当に大変だと思いますが、ファンとしてはいつまでも頑張ってほしいと思ってしまいますよね。次も期待しています!

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© 2023 「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

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新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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