映論言いたい放題 Film 200 『罪の声』

罪の声
映論言いたい放題

映画『罪の声』
2020年10月30日 公開
2021年4月23日 Blu-ray&DVDリリース
■監督:土井裕泰(のぶひろ)
■原作:塩田武士
■脚本:野木亜紀子
■出演:小栗旬/星野源/松重豊/古舘寛治/宇野祥平/篠原ゆき子/原菜乃華
■あらすじ:昭和最大の未解決事件と呼ばれる「ギン萬事件」。それは食品会社を標的にして毒物混入を繰り返し、マスコミや新聞社を巻き込んだ「劇場型犯罪」だった。新聞記者の阿久津(小栗旬)は事件のキーとなる脅迫テープに子どもの声が使われていたことに注目し、取材を重ねていく。ちょうどその頃、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は父の遺品を整理しているときに古いカセットテープを見付ける。懐かしさから再生してみるとそこから聞こえてきたのは、例の未解決事件の脅迫テープと同じ声だった。
© 2020 映画「罪の声」製作委員会
合評参加者:
 功刀(くぬぎ)弘暁(T・ジョイ長岡 支配人、「週刊シネマガイド」出演)
 三浦佳子(T・ジョイ長岡 映写担当)
 akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
 和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)

※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送

功刀:この映画、原作が「騙し絵の牙」の塩田武士さんなんですよね。塩田作品、最近立て続けに映像化されていますよね。

和田:監督の土井裕泰さん、脚本の野木亜紀子さん、主演の星野源さんはドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のトリオですが、あのラブコメテイストとは全く違った作品になりましたね。ちなみに土井監督は「ビリギャル」で長岡ロケも経験されています。

功刀:たしかに監督の他の作品とは違う、かなり重厚な作風でしたね。

akko:グリコ・森永事件をベースにした作品ということは分かっていたんですが、まさかさらにその裏に学生運動の話が隠されていたとは予想外の展開でした。

三浦:私はグリコ・森永事件の時はまだ小学校低学年くらいで、ほとんど覚えていないんです。だからでしょうか、あの事件の真相がこの映画の通りだったのではないかと錯覚しそうになりました。

akko:「どくいり きけん たべたらしぬで」とか、大阪弁というのも他の事件とは違って妙にリアルで怖い事件でした。

功刀:うーん、僕もあの事件は「聞いたことがある」くらいの感覚ですね。だからそれより前の学生運動なんて今の感覚では考えられません。大学生同士が思想のために徒党を組んで殺し合うとか、すごい世界だと感じました。

三浦:昭和最大の未解決事件と言いながら、新聞記者の阿久津が調査をした途端、パタパタと真相に辿り着いてしまいますよね。事件の秘密を知る板前の男性(橋本じゅん)が口が軽くて、ああいう人がいるからこそ、事件が解決するんだろうなあと感じました。

和田:主演の二人もよかったですが、脇を固める俳優陣もすごかったですね。梶芽衣子さんに宇崎竜童さん、それと個人的には柔道一直線の桜木健一さんを久しぶりに見られたのが嬉しかったですね。俊也の父の柔道仲間という役でした。

akko:この作品は事件を追いかける外側の人たちと、当事者たちの二重構造ですよね。それぞれの物語の交差の仕方が絶妙でした。

和田:主役2人の話が、それぞれ別の映画にしても成り立つくらいのボリュームで、エピソードがてんこ盛りでした。

三浦:私はどちらかというと事件の真相を追いかける側よりも、巻き込まれた子どもたちの物語に引き込まれました。真実が明かされたときの闇の深さは相当なものだと感じました。

功刀:僕もそうですね。「罪の声」の子どもは3人いましたが、星野源さん視点で最後までグーッと引き込まれてしまいました。

和田:上映時間が2時間22分と長めでしたが、ずっと引きつけられましたね。

akko:ええ?そんなに長かかったでしたっけ?全く感じませんでした。

三浦:自分のことを責めるな、君たちのせいじゃない、その言葉は分かります。しかし大人や親たちに裏切られたことを知った子どもの気持ちというのは、そうすんなりとはいかないですよね。

功刀:たしかに。きれいに終わったように見えて、後からじわじわと来るような…。

三浦:じっくり考えると怖い映画です。

和田:余談ですが、「京都に向かって1号線を2キロ、バス停城南宮のベンチの腰かけの裏」という子どもの声のメッセージが印象的で覚えてしまったんですが、後で調べてみたら、あの文言は実際にグリコ・森永事件で使われていたものと同じでした。リアルに感じる訳です。(了)

T・ジョイ長岡 2021年4月オススメ映画

BLUE/ブルー

映画『BLUE/ブルー』
2021年4月9日公開
自身が30年間続けてきたボクシングを題材に、監督自らが脚本も担当した本作。誰よりもボクシングを愛しつつも負け続けるボクサー瓜田(松山ケンイチ)と、彼の後輩で才能に恵まれ日本チャンピオンに王手をかける小川(東出昌大)。ついには小川に初恋の女性・千佳(木村文乃)まで奪われてしまう。吉田恵輔監督は、長岡市でほとんどのシーンが撮影された『愛しのアイリーン』を手掛けた本市ともゆかりの深い人物だ。
©2021「BLUE ブルー」製作委員会

アーヤと魔女

映画『アーヤと魔女』
2021年4月29日公開
宮崎吾朗監督によるスタジオジブリ初の長編3DCGアニメで、原作は「ハウルの動く城」と同じくダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名児童文学。自分が魔女の娘だという事実を知らずに育った10歳の孤児の少女アーヤが主人公だ。彼女は「子どもの家」で何不自由なく暮らしていたが、ベラ・ヤーガと名乗るド派手な女とマンドレークという背の高い怪しげな二人組に引き取られることになる。12月30日にNHK総合で放送されたものに一部シーンを追加し劇場公開となった。
©2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

リバティデザインスタジオ

新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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