映論言いたい放題 Film 230 アナログ
『アナログ』
2023年10月6日公開
■監督:タカハタ秀太
■出演:二宮和也(水島悟)/波瑠(美春みゆき)/桐谷健太(悟の友人・高木淳一)/浜野謙太(悟の友人・山下良雄)/リリー・フランキー(喫茶店ピアノのマスター・田宮)
■あらすじ:手づくりの模型や手描きの線にこだわる店舗デザイナーの悟。そんな彼が、自ら内装を手掛けた行きつけの喫茶店「ピアノ」で、携帯電話を持たない謎めいた女性みゆきと出会う。連絡先を交換しないまま二人は「毎週木曜日に、ピアノで会う」と約束を交わし、時間を積み重ねていく。しかし悟がプロポーズを決意した当日、みゆきは現れず、以来姿を消してしまった。
© 2023「アナログ」製作委員会 © T.N GON Co., Ltd.
合評参加者:
三浦佳子(T・ジョイ長岡 映写担当)
akko(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」「週刊シネマガイド」出演)
和田竜哉(「ムーヴィーズゴー!ゴー!」ディレクター、「週刊シネマガイド」出演)
※「ムーヴィーズゴー!ゴー!」FMながおか(80.7MHz)毎週木曜18時30分より インターネットラジオでも聴けます!
※「週刊シネマガイド」ケーブルテレビNCT 11ch、「ちょりっぷナビゲーション」内で放送
和田:実は原作のオチを知った状態で観たのですが、それでも感動しました。
三浦:原作はビートたけしさんの小説ですよね。小説は未読ですが映画を観て、こんな純粋な面もある人なのかと驚かされました。だって『アウトレイジ』の人ですよ。
和田:人間の闇の部分ばかりを描いていると、反対の方向に行きたくなるのでしょうかねえ。
akko:携帯を持たない彼女と、喫茶店で待ち合わせるって、まさにタイトル通り「アナログ」な世界ですよね。以前、創業から半世紀という老舗喫茶店の人にインタビューしたときに「携帯電話がなかった頃は、喫茶店で待ち合わせがデートの定番で、そういうお客さまが本当に多かった」って言っていたんですよ。
和田:本屋で待ち合わせとかね。あと女の子の家に電話掛けるときは親が出るから、緊張するんだよね。
三浦:こんな純愛あるのかなぁ…と思う気持ちもチラリと芽生えてしまったのですが…。
akko:たけしさんの世代だと、相手と手も繫いだこともないような状態でずっと思いを募らせていく…というのを、実際に経験している世代ですよね。
三浦:そうですね。今の若い世代は展開が早いですからね。見ていていいなあと思ったのは、スマホのバッテリが切れて、自分たちの勘を頼りに街あるきするシーンです。最近ちょっとデジタル疲れ気味で、ああいう感覚っていいよなって思いながら鑑賞していました。
和田:アナログというタイトルから、昔は良かったというデジタル批判の作品かと思いきや、古いものの良さを肯定しつつ、新しいものの利点も否定せず受け入れているところが良かったですね。
akko:私が良いなあと思ったのは、リリー・フランキーさん演じる喫茶店のマスターです。
和田:そうそう。あのリリーさんが、あんな寡黙な役を演じるとは!
akko:ちょっと一癖ありそうな雰囲気を漂わせつつ、酸いも甘いも知り尽くしてこのお店にたどり着いて、今は穏やかにしているのかなとか、いろいろ想像してしまいました。
和田:悟が落ち込んでいるときに、何も言わずポンって肩を叩いたりね。良い味出していましたよね。
三浦:良い味といえば、悟の親友2人もよかったですよね。あの男同士の軽いノリや雰囲気最高でした。でも実はしっかり優しくて。やり取りとか本当に楽しそうでアドリブ入っているのかなって思いました。
akko:こんな良い友だちを持てたんだから、それだけでも悟は幸せ者だなあと思いながら見ていました。
三浦:ただいなくなった彼女の真相を知った後の悟の決断には少しモヤモヤしました。もし私が彼女だったら、果たして嬉しいと思うかどうか。オチに関することなので、ハッキリ言えませんが…
和田:天涯孤独の身の上になった彼が、これからどう生きていきたいかと悩んで出した答えだったのでしょう。
akko:きっと彼女を救うというより、彼女を救うことで自分が救われたかったのかなと思いました。そうそう、映画館でみるからにやんちゃ系の若い男性が近くに座っていたんですが、クライマックスのシーンで号泣していてビックリしました!
三浦:あら、なんて純粋な。やっぱり私はちょっと斜めにものを見てしまうのかな。
和田:いやいや。考えてみれば原作、監督、主人公の悟、全て男性ですよね。僕もグッと来たし、男性目線の物語だったのかもしれないですよね。
akko:ああ、そうかも。私も正直、そもそもこの二人には別の運命もあったのではないかとか、いろいろ考えてしまいましたから。といいつつ、ラストシーンは感動して「よかった、よかった」とホッとしましたが(笑)
和田:今挙げた人以外にも、悟の母、会社の上司、みゆきの姉など、いろんな人の優しさが身に染みる映画でした。
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© 2023 TOHO CO.,LTD.
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