春の展覧会/BLUE at maison de たびのそら屋
2018年4月6日にオープンした、喫茶併設ギャラリー「maison de たびのそら屋」。翌年の『開廊一周年記念企画 ー flow展 ー』に始まり、『hope』『izumi』『Journey』など、毎年テーマを設けて周年記念の展覧会を行ってきた。
今年は冬期休館が開けた4月3日から、県内外4名の作家が参加した春の展覧会『2023 SPRING EXHIBITION -BLUE-』を開催している。「ブルーは色彩だけではなく、心の模様も表す言葉」とオーナーの久保田さ和さんは語る。青空のような晴れ晴れとした心や、ブルーな気持ちなど、確かに青はさまざまな心象と重なる。とは言いつつも、展覧会の案内はがきには「【青】だけを集めた展覧会ではありません」と書かれている。果たしてどのような作品が展示されているのだろうか。
「日々の暮らしの中で発見」安立貴美枝さん
ギャラリーに入るとまず迎えてくれるのが安立貴美枝さんの作品だ。カラフルな色づかいが特徴的だが、どの作品にも必ず青が入っており、「青」という色の多様さを見ることができる。
こちらはパレイドリア現象(壁のシミが人の顔に見えるなど、本来そこに無いけれど、見る人の記憶にあるよく知ったものが見えること)を取り入れた作品だ。ウサギを描いた「Snow rabbit」は雪の上に落ちたサザンカの花びらと葉、松の葉が、まるでウサギの顔に見えたところから着想を得たのだとか。
日常の何気ない景色を、アートに変換させてしまうその発想が面白い。
「青は特別な色」蓮池ももさん
今回のテーマをブルーにしたのは、久保田さんが昨年の大地の芸術祭で見た、蓮池ももさんの作品の青色が印象に残っていたことがきっかけだという。
蓮池さんは「青は特別な色」と表現する。「昔からお守りに使われていたりして、力のある色ですよね」と話す。
こちらの一連の作品のタイトルは「星の原」。星空や草原に顔だけの不思議な存在が描かれているのが印象的だ。これは「精霊のイメージ」だそう。絵をじっと見ていると、何か物語が浮かんできそうな作品たちだ。
「主役は器でなく食べ物」ムーニーともみさん
こちらは茨城県からの参加となるムーニーともみさんの作品だ。
ムーニーさんは小学生の子供2人を育てながら、作陶しているそうだ。「作陶で大事にしているのは器に盛った時に美味しく見えるかという事」「染め付けの藍色と自然な土の色味の上にいつものおかずを盛り付けてみて下さい。きっと食卓に新しい発見があると思います」と、たびのそら屋のブログにご本人からのメッセージが掲載されている。
「青は影に用いる色」本田貴哉さん
最後にご紹介するのは日本画家の本田貴哉さん。自身が訪れた日常の風景を描いている。
本田さん曰く、季節は夏を描くことが多いのだとか。そのため日向と日影のコントラストを強く描いている。「影に用いる色は青が多いですね。青にこだわるというより、影の表現にこだわりがあるという感じです」
歩いているときに「雰囲気に何か感じるものがあると足を止めてスケッチ」するという本田さん。余白の使い方やどこを密に描くのかなど、綿密に考えて構図を決めているそうだ。
桜と珈琲
ギャラリーの隣には喫茶室があり、展覧会ごとに異なるお店から取り寄せたコーヒーを、「旅コーヒー」と称して提供している。今回は、十日町市蓬平「コーヒーとタープ」の豆が使われていた。「コーヒーとタープ」の店主、会田法行さんは、写真家として国内外で活躍している人で、今回の出展者・蓮池ももさんの夫だ。
今回は3種類のコーヒーが提供されていた。選んだのは「東ティモール」。こちらは会田さんが自家焙煎を始めた原点の産地なのだとか。
ちょうど今は、窓から見える柿川べりの桜が見事に咲き誇り、訪れる人たちを迎えてくれる。アートとコーヒー、そして春の見事な風景。心落ち着かせる素晴らしい時間をたっぷりと楽しむことができた。
maison de たびのそら屋
「春の展覧会/BLUE」2023年4月3日〜16日
長岡市呉服町2-1-5 TEL:0258-77-2981
休館日:4/7・12
午前11時〜午後5時(最終日は午後4時まで)