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「ダリ版画展」+コレクション展「幻想世界 シュルレアリスムと美術」 at 新潟県立近代美術館

アート・展覧会

現在、ダリ版画展が新潟県立近代美術館にて開催中だ。
サルバドール・ダリ(1904-1989)というと、ギョロ目でクルリンとした口ひげをたくわえた、あの強烈なルックスが思い浮かぶ。固いはずの時計がまるで餅のように伸びきったり、象の足が虫のように細長かったりと、作品も一度見たら忘れられないものが多い。そのダリの版画だけを集めた展覧会とは、果たしてどのようなものなのだろうか。

ダリになりきってみよう

さて会場へ入ろうと思ったら、その前に興味深いもの発見。ダリの特徴的な口ひげをあしらった顔出し看板的な撮影スポットだ。しかもインスタ風のデザインになっているのが面白い。
早速、ダリになりきって撮影してみた。こういう遊び心の効いた仕掛けはうれしい。

フレームは2種類

ダンテの神曲、3500枚の版木の力作

まず最初に目にするのは、イタリア最大の詩人と評されるダンテの代表作である長編叙事詩《神曲》の挿絵だ。《神曲》は、ダンテ自身が1週間にわたって死後の世界を古代ローマ詩人のガイドで巡るという内容だ。
じつはこの一連の作品、そもそもはダンテ生誕700年を記念してイタリア政府から依頼を受けた仕事だった。ダリは早速102枚の水彩画を描いたが、企画は頓挫。それをフランスの出版社が引き継ぎ、100点が木口木版で版画化されたのだ。

ダンテのあの世巡りを版画で表現、こちらは「地獄」

版画と聞かなければ分からないほどの色彩に圧倒される。100点の版画に対して、なんと3500枚の版木が使われたそうだ。担当学芸員の飯島さんは「水彩画の柔らかい色彩やみずみずしさが表現されていて、カラリストとしてのダリの一面を窺うことができる」と紹介していた。

「天国」のコーナー

個性派ダリを感じる強烈な作品たち

15の版画集では、ぐにゃりと曲がったやわらかい時計、足の細い象など、ダリらしいモチーフが登場する。さらに注目は巨匠へのオマージュだ。レンブラント、シャガール、ピカソなどが登場するのだが、特徴を捉えていて面白い。ダリの自画像はベラスケスの肖像を重ね合わせて描かれている。

15の版画集のコーナー

「シュルレアリスムを代表する画家」と呼ばれているダリ。それがいちばん伝わってくるコーナーが「シュルレアリスムの思い出」だ。ダリのミューズであった愛妻ガラを聖母マリアにしたり、自身が名画の登場人物になりきったり、芸術は自由だということが伝わってくる、楽しくも個性的な作品がずらりと並んでいる。

彫刻作品も展示

会場のところどころに「ダリ語録」が掲示されていることにも注目。

天才を演じつづけよ。
そうすれば、お前は天才となるのだ!

まさに自らを「天才」と称したダリらしい言葉だ。

作品と共にダリの言葉も楽しめる

ダリは原爆投下に衝撃を受け、科学への興味を持つようになったという。そこには科学技術の力で死から逃れたいという気持ちがあったのではないかとされている。その思いをダリは、「不死のための10の処方」などの一連の作品に託した。
興味深くはあるものの、何を表現しているのか分かりづらく難解な作品だ。だがそれもまた「ダリからの挑戦状」のような気持ちで鑑賞するのも面白いかもしれない。

「不死のための10の処方」の作品たち

ほかにもダリが日本の民話を描いた版画などもあり、気がつけばあっという間に1時間以上の時が経っていた。学芸員の飯島さんは「多作で多ジャンル。現代アートの先駆者であり、あらゆる分野に足跡を残している。知れば知るほど奥が深い作家」とダリを表現した。まさに「奥が深い」という表現がしっくりくる展覧会だった。

新潟県立近代美術館
「ダリ版画展」2022年10月8日〜12月4日
新潟県長岡市千秋3丁目278-14  TEL:0258-28-4111
休館日:月曜日
午前9時〜午後5時(観覧券販売は閉館30分前まで)
観覧料:一般1,400円、大学・高校生1,200円、中学生以下無料

コレクション展のシュルレアリスム作品

現在ダリ展関連企画として、コレクション展では展示室2にて「幻想世界 シュルレアリスムと美術」を開催中。
そもそもシュルレアリスムが誕生したのは1920年代のパリ。その後国際的な運動へと発展し、日本にもその流れはやってきた。

ジョアン・ミロの作品

作品展示以外にも、シュルレアリスム関連年表(海外/国内/政治・社会・文化)などの解説パネルもあり、初心者にとっても理解しやすい展示となっている。シュルレアリスムとひとくちに言っても、作家によってアプローチはさまざま。その個性的な作品を見比べるだけでも楽しいひとときだ。

五泉出身の阿部展也(のぶや)の作品も並ぶ

展示作品の中に新潟出身で、31歳で早世した井上愛也の作品《現実の具体》がある。この作品は1936年、井上が20歳のとき、まだ無名だった6人の画学生によるグループ展「表現展」に出品したものだ。この展覧会にちょうど来日中だった詩人ジャン・コクトーが足を運んだというエピソードがある。それは通り一遍の鑑賞などではなく、丁寧に見て回り、作家たちと言葉を交わしたという。

新潟県立近代美術館
「コレクション展 2022年度 第3期」
2022年10月04日(火) 〜 2023年01月09日(月)
観覧料:一般430円、大学・高校生200円、中学生以下無料

リバティデザインスタジオ

新潟県長岡市のデザイン事務所。グラフィックデザイン全般、取材・撮影・ライティング・編集などの業務を展開。

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