出張放浪記 その17 オリンピックプレイベント の巻

国立競技場
出張放浪記

月刊マイスキップ 2020年10月号 vol.237 より転載

東京オリンピック2020の観戦チケットの抽選は見事に外れてしまった。そこでせめて雰囲気だけでも味わいたいと、昨年末に開催されたプレイベントに参加した。新国立競技場のこけら落としイベントだけに大人気で、こちらもチケットは完売だったようだが、なぜか私は結構良い席が取れた。隈研吾氏の設計による新しい競技場は日本全国の杉材を使ったという庇がことのほか美しく、圧倒的な存在感を見せていた。

新国立競技場。階段がポンピドゥー・センターのよう

 写真を撮る人やキョロキョロする人でごった返すなか、自分も負けじとうろうろする。飲食サービスは新しい施設とは思えないほど貧弱で、祭り屋台のようなものをカウンターで売っているだけ。テーブルも無く、立ち食いか座席に持って行くしかない。その座席も、限られたスペースに無理矢理詰め込んだためか狭く、人が前を通るたびに立って避けねばならないほど。おまけに経費削減で観客席には壁が無いため、年末の寒風の直撃で想像以上に冷える。とまあいくつか不満はあるものの、フィールドが結構近いため臨場感があり、音響の条件も悪くないため、見る環境は良いと感じた。

上階のスタンドは傾斜が大きく、ちょっと怖そう

 さて肝心のイベントだが、東北六大祭りの競演に始まり、嵐・ドリカムのコンサート(残念ながらどちらも興味なし)、そしてウサイン・ボルトが登場するリレー競技がトリ。彼の人間離れした身体能力を生で感じられただけでも価値があった。

盛り上がった秋田の竿燈まつり

 ここでオリンピックが見られる人はいいなあとしみじみ感じながら帰路に着いたのだが、まさかその後こんなことになるとは……。あれが幻のプレイベントにならないことを祈るのみだ。(了)

真新しいトラックを颯爽と駆け抜けるボルト

和田竜哉 Tatsuya Wada

リバティデザインスタジオ代表。子どもの頃から雑誌・ミニコミが好きで、ライターデビューは高校の学校新聞。以来、グラフィックデザインの傍らフリーペーパーや各種メ...

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